「正社員でないと私の存在価値はない」と思ってましたが、両立は厳しかった…
Hさん
国内高級ミセスブランドの販売員を経験した後、国内ミセスカジュアルブランドの生産管理に転職。その後、医療事務にキャリアチェンジしましたが、そこも退職…。正社員と子育ての両立の難しさに直面しました。
子ども(9歳)
ー販売員としてのこれまでの経歴を教えてください
幼い頃から洋服が大好きだったので、アパレルを扱う会社に就職したいと強く思っていました。当時50社近く面接を受けたと思いますが、採用してくれたのは国内高級ミセスブランド一社だけでした。
平凡な家庭に育ってきた20歳そこそこの私が、母親よりも年上で裕福な女性を相手にお洋服を販売するのは、難しさもありましたがやりがいもありました。
しかし厳しいノルマやスタッフ間の不仲により、転職を決意しました。
ー問題なく辞められましたか?
当時、お付き合いしていた男性がいたんですが「その彼と結婚します! 」という理由で辞めました。実際その会社の店舗では『結婚したら退職する』というのが通常だったので、特に非難されることなくすんなり辞めることが出来ました。
ー『結婚したら退職するのが普通』、だったんですね?
そうなんです。特に新卒の販売員は、“結婚するまでの腰掛け“的な感覚の人が多かったと思います。
その意識は会社の方にもありました。大きな会社だったので、当時、新入社員を1000人程度採用していましたが、会社としても、『販売員は、辞めて当然。残れるような優秀な存在が見付かったらラッキー』くらいにしか思ってなかったと思います。
バリバリ働いて成績を出していたのは、40〜50代の独身女性スタッフと、一家の生活を支えなければならない主婦スタッフなど。『仕事命‼ 』的な女性スタッフばかりでした。だから正直、この会社で子育てすることは全く考えられませんでした。
仮に出産したとしても、小さな子どもを抱えながら彼女たちと同じようなスタンスで働くことは無理だと思いました。
ー退職して、どのような業界に転職したんですか?
アパレルは好きだったので、アパレル業界でもメーカーの本社スタッフを希望しました。 事務職だと、販売職と違って子育てもしやすそうだと思ったのも理由です。
ハローワークでアパレルの事務職を探したところ、たまたま新卒の時に最終面接まで行った会社が採用の募集を出していたんです。
それで応募して面接に行ったところ、人事の方も私のことを覚えてくださっていて。トントン拍子に採用が決まりました。
その会社で9年、生産管理事務として正社員で働かせていただいたのですが、その間に結婚と出産を経験しました。
ー新しい会社の事務職は、仕事と子育てが両立しやすい環境でしたか?
産休・育休を取って、戻ってくる女性社員もちらほらいたので、比較的両立しやすかったと思います。経験者に聞くと、それぞれ細かい問題はあったようなので「両立しやすかったです! 」と断言は出来ませんが、それでも随分融通を利かせていただいたと思っています。
ただ、私の場合は、産休後に異動を言い渡され、家から2時間かかる商品センター勤務になりました。片道2時間と知ったとき、正直「辞めようかな…」という想いが頭をよぎりました。でも洋服の仕事に関わっていたかったし、そこで働く人々もみんな良い人ばかりだったので、挑戦してみることにしました。
でも通勤に片道2時間は、かなり負担が大きかったです。
定時で上がっても、最寄り駅までダッシュ、乗り換え2回、駅から保育園へ自転車でダッシュ…、それでやっとギリギリお迎えに間に合う、という感じだったので…。
4年ほどそんな生活を続けましたが、私の体力がもう限界で…。
自分の年齢のことも考え、転職するなら早い方が良いと思い、今度は住んでいる近場で職を探すことにしました。
学生時代に小さなクリニックでアルバイトした経験があったので、その経験から条件に合う仕事を探した結果、医療事務として正社員で採用してもらえるところに出会いました。
―しかし、そこをすぐに退職してしまったのは何故でしょうか?
子どもの「小学校入学」が大きな理由です。いわゆる「小1の壁」でした。
保育園の時は最長19時まで延長保育してもらえましたが、学童では最長でも18時まで。
会社に時短勤務の相談もしましたが、私は中途採用だったので無理だと言われてしまって。
子どものお迎えに間に合わなくなってしまったことが、仕事を辞めた最大の理由です。
ー将来について、理想の「はたらく」スタイルはありますか?
仕事を辞めて主婦業に専念していたら、それはそれでとても楽しいんですよね(笑)
私は子どもを9ヶ月から保育園に入れていたこともあり、子どもとゆっくり過ごす時間がほとんど無かったんです。
今は、ゆっくり食事を作る時間も、じっくり子どもの宿題を見てあげる時間も、今日学校で何があったか目をキラキラさせて話す子どもにちゃんと向き合って耳を傾けてあげられる時間も、心の余裕もある。
「正社員で働いていなかったら、私自身の存在価値がない」と思っていましたが、しばらくは子ども中心のスタイルでのんびり生活していきたいです。
子育てをしている女性にとって安定のある正社員は希望ですが、正社員であるがゆえに、転勤の命令も、勤務時間も、就業規則通りに働かないといけなくなってしまいます。 もっと子育てをしている正社員の働き方が、男女問わず柔軟であれば良かったのにと思いますね。
次回は、カフェの店長をしていたけど離職した方のリアルインタビューをお届けします。
みなさんのご感想、ご意見をぜひお聞かせください。
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