ママ作業療法士として親子に寄り添ったサービスを
作業療法士としてリハビリテーションセンターに勤務しながら、横浜市都筑区の自宅でおやこ発達教室Coconを主宰。0~3歳児向けの遊びクラスと、主に小学生までのお子さんへの個別療育を提供している定金さん。ママ作業療法士として様々なステージで活躍する彼女にお話を伺ってきました。
作業療法士、親子教室Cocon主催
定金雅子(さだかね まさこ)さん
ボランティアの慰問演奏をきっかけに志した作業療法士の道
高校生のとき所属していた吹奏楽部の慰問演奏会で、障害児施設や病院を訪れた定金さん。
難病と闘う患者さんたちを目の当たりにして「身体を自由に動かせない人たちができることを増やし、社会参加するための手助けをしたい」と考えたそうです。
「高校生のときに作業療法士になることを決意し、大学ではリハビリテーション学科で勉強をしました。」
卒業後約10年間、作業療法士として病院に勤務し、学びの多い日々を送ります。
悩むママたちに寄り添う形で親子教室Coconをスタート
その後、待望の長男を妊娠。
しかし、幸せの中にいる定金さんを病がおそいます。
「子宮頸管無力症という病気で、妊娠後期から出産までの約3カ月間入院をしました。
入院中はすごく不安だし、体も自由に動かせない。
患者さんが医療従事者に身をゆだねるしかできないことを実感すると共に、作業療法士の責任の重さも再確認する出来事でした。」
生まれてきた息子さんは重度の食物アレルギーを持っていました。
ドクターストップにより子どもを預けることができず、産休後に復帰予定だった病院を退職することになります。
「やりがいを感じていた仕事を辞めることはとても辛かったです。
息子のアレルギーも重く、仕事を辞めて息子に向き合っている時間が長かったので、当時はかなり神経質な育児をしていましたね。」
しかし、ご主人の留学で海外へ移住したのをきっかけに価値観が変わっていったと言います。
「アメリカとカンボジアに合計3年間住みました。
海外で多様な価値観に触れたり、おおらかな気持ちで生活している方たちと出会ったことで、小さなことを気にしなくなっていったように思います。」
アメリカでは現地の療育センターのような場所で作業療法士の働き方を学び、カンボジアでは日本人補習校の幼稚部の先生をしていたそうです。
「幼稚部で働いていたとき、私が作業療法士だと知ったお母さんたちから子どもの発達についてたくさんの質問を受けました。
私は大学で子どもの発達について学んでいたし、作業療法士として運動学や脳科学は専門分野です。
そんな風に知識がある私でも、自分の育児となると冷静にはなれないときがあった。
正解がない育児の中でたくさんの情報に振り回され、過保護になったり不安になったりしてしまうお母さんに寄り添えたらと、親子教室Coconをカンボジアで立ち上げることにしました。」
カンボジアのCoconには70名近くのママたちが通っていたそうです。
ママのよりどころになれる場所を作りたい
帰国後、日本のご自宅で親子教室Coconを再度オープン。
現在は作業療法士としてリハビリテーションセンターに週1回勤務しながら、Coconを通じてたくさんの親子を支援しています。
定金さんがパラレルワークをしているのには理由があるそうです。
「教室運営に加えて、社会とのつながりも持ちたいと考えていました。
リハビリテーションセンターに勤務し同僚や幅広い年齢層の患者さんと触れ合うことで、自分を客観視することができます。
育児との両立ということもあり、特に時間的には大変なことも多いですが、それでも、お母さんを孤立させないためのCoconのような場所の必要性を強く感じているので頑張れますね。
夫の協力があるのも両立の秘訣だと思います。
私が勉強のためにセミナーに参加するときなど、一日中夫が子どもの世話をしている日もありますよ。」
Coconがインスタグラムで発信する情報を見て、日本全国、そして海外からコンタクトを取ってくれるママも多数いて、オンラインでの相談も受け付けているそうです。
ご自身がママだからこそ、相談に来るお母さんがどれだけ我が子を大切に想っているのかがよく分かる。
だから、ただ正論を伝えるのではなく、お母さんの気持ちに寄り添いながらアドバイスをする。
そんな、ママ作業療法士にしかできない育児支援の形があることを教えてくれました。
「専門機関ではなく親子教室の形をとることで、より自然に育児の中に専門的な要素を取り入れることができます。
今後は、専門機関と一般的な親子教室の狭間を埋めるような、専門家による親子教室を展開していきたいと考えています。
私のような作業療法士だけでなく、理学療法士や言語聴覚士、助産師さんのような各分野のプロがいる親子教室で、育児に悩むお母さんのよりどころになれるような場所を作るのが目標です。」
育児をしながらの仕事復帰に迷うママに「踏み出せない理由を考えるよりも、踏み出した後のワクワクした状態を想像してみてください。ママが充実していること、輝いていることは家庭にとっても大切なことだと思います」と笑顔でエールを送ってくださいました。
文:平野優子
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