地域社会や保育サービスを頼って、自分らしい育児と働くの両立を
働くパパママの子どもが、保育園や小学校のあとに過ごす”おうち”のような場所「あっとほーむ」。横浜市都筑区にある認定NPO法人あっとほーむを運営する小栗ショウコさんに、働くママにとって大切なことなどお話を伺いました。
あっとほーむ代表理事、おうち保育園®協会代表理事( あっとほーむ )
小栗 ショウコさん
働くママを支援する場所を作りたい
「あっとほーむ」が生まれた20年前、それは仕事も待遇も男性と同じ条件で働く「女性の総合職」が誕生した時代。
現在のように育児と仕事を両立するための社会制度は整っていなく、ママどころか女性が働くだけでも大変な時でした。
やりがいのある仕事をしたくても、女性という理由でそれを任せてもらえない。
育児を理由に仕事を切り上げて退社することなど考えられない時世でした。
代表の小栗さんが就職をしたのは正にその頃。
10年間総合職の会社員として働きます。
しかし、まだまだ男性社会の企業。
周囲を見ても、出産から復帰した社員に重要な仕事は任されていませんでした。
「この会社でスキルを活かして働くのは難しいかもしれない。」
将来、自身が活躍するイメージが持てずに小栗さんは退職をします。
「都筑区は当時から転入者が多い土地でした。私自身もそうで、近くに頼れる人がいなかった。仕事と育児を両立することの難しさを感じていたので、働くお母さんをサポートする側にまわろうと思いました。
働くお母さんたちが少しでも心に余裕を持てるように、子どもたちが安心して過ごせる場所を作りたいと考えました。」
「あっとほーむ」での子どもたちは、まるで家でくつろいでいるかのような時間を過ごしています。
宿題をして、手作りの夕飯をみんなで食べて、お風呂に入る。
学校でも家でもない、あたたかく穏やかな第三の居場所です。
設立当初、「あっとほーむ」の利用者はIT企業に勤める方が多かったそうです。
「みなさん仕事に対するプロ意識が高く、育児をしながらも自身もやりがいを持って仕事を続けたいと考えてる方ばかりでした。
男女に関係なくスキルを活かして仕事がしたい。
子どもがいても仕事を続ける方法を見つけたい。
そのために子どもを安心して預けられる場所がほしい、それが当時の働くママたちに共通した願いでした。」
地域社会を頼るのは、子どもにとってプラスなこと
「働くお母さんは、自身の要望をもっと会社に伝えていいんです。
いま様々な社会制度が整ってきているのは、20年前から現在までに、それを訴えてきた人たちがいるから。
男女雇用機会均等法が施行された頃(1986年)、働く層の主役は男性でした。でも、その頃に声をあげた女性がいたから今の社会があるんですよね。」
この20年間で「あっとほーむ」の利用者層は変わってきて、現在ではエッセンシャルワーカーといわれる職種の方たちの利用が増えているそうです。
一方で、まだまだお母さんが育児をするべきという風潮が強い日本。
「もし、子どもを預けるのを躊躇しているお母さんがいたら、親以外に自分の子どもに関わってくれる大人がいるのはとてもいいことなんだと伝えたいです。
親が子どもにしてあげられることには限りがあります。
たくさんの大人と接する機会を持つのは子どもにとってプラスなこと。
日常生活に親以外のエッセンスが加わることで、子どもの世界は飛躍的に広がります。
『頼っていい』のではなく、『頼った方がいい』んですよ。」
これからの時代、必要なのは起業家スピリット
「あっとほーむ」のスタッフには、海外に住みながら遠隔で事務局を担当している阿部さんという方がいます。
彼女は、働く女性をサポートしたいという強い気持ちを持っていて、最初はボランティアから始まり、アルバイトを経て正社員になった後、ご主人の転職に伴い、海外から「あっとほーむ」を支えることになったそうです。
代表の小栗さんはこう話します。
「子どもたちの幸せと同じように、スタッフみんなの幸せも願っています。
阿部さんとは女性支援に対する想いや価値観を長い間共有していて、これからも一緒に仕事をしたいと思っていました。
あっとほーむにとって欠かせない存在でしたし、海外移住後も働き続けたいという本人の意思もあって、このような形になりました。」
もし、育児と仕事を自分らしく両立するために必要だと感じていることがあるならば、勇気を出して声をあげてみましょう。
会社が変わってくれるのを待つのではなく、積極的に自分の意見を発信し、行動を起こしてみること。
そんな起業家精神のようなものを一人ひとりが持って働くことが大事なのではないか、とお話してくださいました。
文:平野優子
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